2.均一性の試験

MRI精度管理
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均一性の試験


準備編

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ファントムを用意しよう

まずは撮影対象となるファントムが必要となります。

MRI装置付属ファントムがあって、形やサイズが条件に合っていればOKです。
無い方は借りるか、作るか、が必要です。

ファントムの形や大きさは指定があるので注意

ファントムの条件

認定機構には条件が細かく記載されているので、確認します。
その中からファントムの条件を抜粋しました。

注意点として、一番はじめの行に、「標準的なNEMA法に準じて測定を行い,(後略)」と書いてあることです。
NEMA法を完全理解した上でやってくれという、ちょっと無茶な要求です。

2.均一性試験

1)標準的なNEMA法に準じて測定を行い、不均一度を算出する。
2)ファントムについて
・頭部:最小寸法は撮像面内で直径10cmの円または保証範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
・体幹部:最小寸法は撮像面内で直径20cmの円または補償範囲の85%のうち大きい方を満たすもの。
・T1値<1200ms、T2値>50ms
・頭部と体幹部の2種類の大きさのファントムを使用すること。

3)撮像条件

・ファントムの安定化を図る。
撮像断面はファントム中心を含む3断面(axial、coronal、sagittal)。
(後略)

性能評価試験項目|日本磁気共鳴専門技術者認定機構(JMRTS) (umin.ac.jp) より抜粋して引用

基本的にSNRの測定と同じ条件ですが、若干違うところがあります。
撮像断面はファントム中心を含む3断面”とあり、さらにファントムが”撮像面内で直径10cmの円”の条件なので、
必然的に球形ファントムが必要、となります。

★頭部想定用として直径10㎝以上20㎝未満の球形ファントムを1つ
★腹部想定用として直径20㎝以上の球形ファントムを1つ
球形のファントムが必要

保証範囲とは?

「SNRの測定」に記載してありますので、気になる方は確認してください。

1.SNR測定 (差分法) | 磁気共鳴専門技術者認定試験にチャレンジ! (brightwalk.net)

ファントムを自作する場合

作る場合はMRI付属のファントム溶液別途球形容器が必要です。

球形容器は東急ハンズネットストア等で購入できます。
スチロール半球 150φ
スチロール半球 250φ
【楽天市場】スチロール半球 150φ│発泡スチロール 発泡スチロール箱・球:東急ハンズ 楽天市場店 (rakuten.co.jp)

中に溶液を入れるそうなのですが、うまく2つをくっつけられれば直接入れられるかもしれません。
でも怖いので溶液はビニール袋かなにかに入れ、半球でうまくサンドする方が良いかと思います。
もしくはビニール袋の中に球を入れ、多少こぼれても良いようにするかです。

作るの大変。なるべく借りよう。


 
 

撮影編

撮影しよう

ファントムの準備ができましたら、撮影していきます。
撮影条件は指定されているので確認しましょう。

撮影条件

3)撮像条件

・ファントムの安定化を図る。
・撮像断面はファントム中心を含む3断面(axial、coronal、sagittal)。
・ファントムはRF受信コイルの中心に配置する。
・室温およびファントム温度は22±4℃。
・TR≧5×T1、TEは一般的に臨床に使用される範囲。
・FOVは面内においてRFコイルの最大径の110%を超えないこと。
・SE法(first echo)を用いる。
・スライス厚≦10mm
・マトリクスサイズは128×128以上を用いる。
・画像フィルタは使用しない。
・SNRを測定して十分なSNRを担保すること。
・ROIは画像断面の75%は少なくとも囲むこと。
・表面コイルは使用できない。
・Parallel imagingを使用してはいけない。

(後略)

性能評価試験項目|日本磁気共鳴専門技術者認定機構(JMRTS) (umin.ac.jp) より引用

この通りに撮像していきます。

撮像条件 解説

ファントムの安定化を図る。

ファントム設置してすぐ撮影すると、溶液が安定しないので、ぐちゃぐちゃの画像になります。
ある程度時間をおいてから撮影です。

よく文献などでは10以上放置しよう、と書いてありますが、10分ではだめ

最低1時間は必要です。

1時間は静置

撮像断面はファントム中心を含む3断面(axial、coronal、sagittal)。


3断面撮影し、測定します。
ファントムが2種類ですので、合計6断面撮影、測定です。

均一性試験では合計6回撮影します。
SNRも同時に測定するので、計12回測定します。

ファントムはRF受信コイルの中心に配置する。

コイル中心にファントムを置くだけです。
注意点があるとすれば、高さ方向も中心にする必要があるので、タオルの上などにファントムを置いて高さ調節しましょう。

室温およびファントム温度は22±4℃

温度を測定しておきます。前日から温度計を撮影室内に入れておく。

TR≧5×T1、TEは一般的に臨床に使用される範囲。

TRの設定です。

前述のファントムの条件の項目で、
T1値<1200ms、T2値>50ms
と、記載があります。

そもそもファントムのT1値T2値を正しく知っていなくては使ってはいけないファントム、ということになります。

ここで先にT1T2値の測定をやりたいところですが、おそらく挫折します。

ですので、ここはまず練習と思って、
T1T2値を知らないままでSNRを測定です。

TR2000msくらいに設定しておけば間違いありません。
間違っていてもSNRの測定はすぐにできます。

もちろん厳密にやりたい方はT1T2値の測定を先にしてOK。

TEは10-100くらいでOKです。臨床に使用される範囲で。

FOVは面内においてRFコイルの最大径の110%を超えないこと。

ボディコイルを使用するので、無視でOKです。

SE法(first echo)を用いる。

素直にSE法一択

スライス厚≦10mm

スライス厚は好きな厚さでOK。

SNR担保の条件があるので、厚ければ厚いほど良いです。
おすすめは10mm

マトリクスサイズは128×128以上を用いる。

せめて256くらいが良いかもしれません。

・画像フィルタは使用しない。
・SNRを測定して十分なSNRを担保すること。

SNRを測定する必要があります。

・ROIは画像断面の75%は少なくとも囲むこと。

SNR測定と同じです。             

・表面コイルは使用できない。
・Parallel imagingを使用してはいけない。

表面コイル、Parallel imagingは使用禁止です。

ここで審査委員から注意コメントがあります。

性能評価試験の書類審査に関する審査委員からのコメント
均一性試験に SNR の記載がないなど、レポート作成が未熟な申請があった。
・SNR の測定に NEMA 法を推奨しており、表面コイルを使用する場合には URL に紹介
する手法を用いるように案内しているが、普段使用しているコイルが表面(多チャンネ
ル)コイルであることを知らない人がいるかもしれない

http://plaza.umin.ac.jp/~JMRTS/dl/gijiroku2021dai2kai.pdf より抜粋して引用

コメントにあるように均一性試験でも表面コイル使っちゃだめです。
本体内蔵ボディコイルで。

撮影条件(例)

頭部想定:TR2000/TE15/Matrix192/NEX2/Slicethick10mm/FOV180/BW150(Hz/pix)
腹部想定:TR2000/TE15/Matrix256/NEX2/Slicethick10mm/FOV250/BW150(Hz/pix)

メーカーによって撮影プランはいろいろだと思います。
施設のMRIのプランに合わせて設定するのが良いと思います。


撮像は6回×2行います。
均一性の測定分が6回、SNR測定分が6回です。

・撮像断面はファントム中心を含む3断面(axial、coronal、sagittal)。

性能評価試験項目|日本磁気共鳴専門技術者認定機構(JMRTS) (umin.ac.jp) より引用

頭部条件で冠状断、矢状断、横断の3方向です。
腹部条件で冠状断、矢状断、横断の3方向です。
 
 均一性測定では全部で6枚の画像を撮影、測定、計算します。
 
 
そして、撮影はSNRの測定同様、同じプランで2回撮影を行います。
SNR測定を思い出してください。2枚撮影して差分する必要があります。
全部で6枚×2回で12枚の撮影が必要です。

SNRも同時に測定するので、計12回測定します。

画像取得・信号強度測定

本撮影

Axi ①
Axi②
Axi 差分画像
  • 頭部想定:Axi×2、Cor×2、sag×2。差分画像Axi×1、Cor×1、sag×1。
  • 腹部想定:Axi×2、Cor×2、sag×2。差分画像Axi×1、Cor×1、sag×1。


測定

75%領域 計算式 
ファントム径[cm] 領域[%] 測定面積= 0 cm2 以上のROIが必要

ファントムの中心からファントム総面積の約75%以上のエリア内のピクセル値に対し、
最大値(Smax)最小値(Smin)を測定します。
これは装置付属の機能で測定可能です。
 
表にまとめて記します。
下の表ではSNRを記載し忘れましたが、ちゃんとSNRの欄も設けて記載してくださいね。
あと測定したROIの大きさも忘れず、記載しておきましょう。
”第三者が同じ試験を追試できる情報が記載されているか。”が重要です。



測定方法を図示

4)測定方法を図示し、評価結果を求めるための数値を図中に直接書き込む。
5)測定結果を求める計算式を添えて、評価結果を表示する。

性能評価試験項目|日本磁気共鳴専門技術者認定機構(JMRTS) (umin.ac.jp) より引用


 これは簡単な図で大丈夫だと思います。
75%の領域で測定したことを記載し、表とは別に図の横に測定結果を記載します。

測定方法の図示を忘れずに

計算

理論

 測定結果を計算し、評価していきます。
まず、計算理論を確かめましょう。

1)標準的なNEMA法に準じて測定を行い、不均一度を算出する。

性能評価試験項目|日本磁気共鳴専門技術者認定機構(JMRTS) (umin.ac.jp) より引用
Determination of Image Uniformity in Diagnostic Magnetic Resonance Images (nema.org)より引用

(1)測定値よりスパン(⊿)と信号平均値(Save)を算出。
(2)不均一性(N)を求める。

NEMAの計算理論から、上3つの算出式がわかりますね。
SmaxとSminは測定済みなので計算するだけです。意外と簡単です。

注意点

The peak deviation non-uniformity measure is sensitive to image SNR. As SNR decreases, Smax and Smin diverge, lowering computed peak deviation uniformity.

Determination of Image Uniformity in Diagnostic Magnetic Resonance Images (nema.org)より引用

とあります。
SNRを測定しないといけない根拠はここです。
SNRが低いとダメとあるので、SNRも測定して記載しておく必要があります。
 また、

If using low SNR images (SNR below 50), the NAAD measure can be noise compensated by computing the NAAD term in a background noise region: (後略)

Determination of Image Uniformity in Diagnostic Magnetic Resonance Images (nema.org)より引用

このような1文も別にあります。
SNR50未満がLowSNRと言っているので、50以上はSNRが必要です。

SNR(確認用)計算式 
信号強度 標準偏差 SNR= 0> 80以上

SNRは50以上必要。安全マージンとってSNR80以上かな?

計算

例として頭部想定ファントムの冠状断の計算を行ってみます。
測定データを確認します。

式(1)より Δ=(2000-1500)/2=250.0
式(2)より Save=(2000+1500)/2=1750
 
従って、不均一性(N)は
式(3)よりN=(250.0/1750)×100%=14.29 N=14.29%

計算結果
頭部想定ファントム (冠状断)         不均一性(N)=14.29%

スパンΔ 計算式 
最大信号値 最小信号値 スパンΔ = 0
信号平均値Save 
最大信号値 最小信号値 信号平均値Save = 0
不均一性N 計算式 
最大信号値 最小信号値 信号平均値Save = 0%

以上の計算を頭部三断面、腹部三断面行い、表にまとめて終了となります。
以下の表のようにまとめればOKです。

最後に

測定は約15分×6回、間1時間の静置時間が必要なので、最低150分は必要になります。
検査の合間にやるのは厳しいですね。
昼休みか、1日の検査終了後、でしょうか。

均一性測定 レポートの書き方 | 磁気共鳴専門技術者認定試験にチャレンジ! (brightwalk.net)

次はスライス厚の測定です。

この通りにやっても100%通過するとは、もちろん言い切れません。
最終的には、もちろんご自身で確認し、ご自身の判断、責任でおねがいします。
当サイトは一切の責任をとれません。

お約束なので記載しておきます。

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