はじめに
精度管理の第二の鬼門、T1T2測定です。
これのせいで受験のハードルが爆上がりです。
なんといっても、ファントムを作るところからはじまりますので面倒です。
しかし1度作ってしまえばスライス厚の測定にも使える?はずです。
準備編
ファントムを用意しよう
まずは撮影対象となるファントムが必要です。
どんなファントム(溶液)を作成するかは、機構の条件に記されています。
1)適当な溶液(例:ガドリニウム希釈溶液など)を作成して測定対象物質を作成し、ファントムの安定化を図った後に撮像を行う。
2)装置に組み込まれた簡易法によらず複数の信号強度点から求める。
3)T1値T2値を求めるための根拠となった計測結果表と片対数グラフおよびそのグラフからの読み取り値からT1値T2値を求めるための数値と計算式を示す。※ 片対数グラフの取扱と、グラフの傾きを測定する場所に注意する。
性能評価試験項目|日本磁気共鳴専門技術者認定機構(JMRTS) (umin.ac.jp)から引用
以下は私が作成した溶液です。
- 精製水 500mLを用意。薬局で購入
- ガドリニウム造影剤をスポイトを使って0.5ml入れる
- 1001倍希釈のガドリニウム希釈溶液(ガドリニウム造影剤0.5ml+ 精製水500ml )の完成
- 測定してみてうまくできなかった場合、希釈の比率を変えて試す
【第3類医薬品】精製水(ポリ) 500mL ニッコー・ハンセン ケミカルスポイト 5ml(10本入)
★精製水を買う
★スポイトを買う
★造影剤の残りをとっておく
撮影条件
撮影条件は特に指定されていません。
好きな条件でOK。
とはいえ、ほとんど変更できるところはありませんので注意。
もちろん、T1とT2の測定で条件がちがいます。
T1値測定条件
IR法にてTRとTEを一定にして撮像します。
TIは以下に示す値に変化させて、連続で撮像していきます。
全TI値での撮影が終わったら、信号強度を図ります。
SNR測定の時同様、ROIで平均信号値を読み取ります。
その作業を全TI分行い、表にまとめます。
T1値測定は、IR法/TR,TE一定。TIを変化させて撮影する
T2値測定条件
T1値測定とは違いSE法で、以下の数値にTEを変化させ、撮影していきます。
全TE値での撮影が終わったら、信号強度を図ります。
その作業を全TE分行い、表にまとめます。
T2値測定は、SE法/TR一定。TEを変化させて撮影する
撮影編
T1値の測定
手順
- TI値を変化させて連続撮像
- 信号強度測定
- グラフ作成
- 計算
TI値を変化させて連続撮像
参考条件
IR法/TR3000/TE12/Matrix128/NEX1/Slicethick5mm/FOV250/BW130Hz/pix/室温24度
信号強度測定
グラフ作成
実測値よりグラフを作っていきます。
Excelでグラフ作成します。
画像を見てください。
TI300msのところで折りかえっているのがわかりますでしょうか?
TI50ms〜300msの数値を補正値としてマイナス表示にします。
得られた各TIの信号強度より、TIが最大の時の信号強度をM0とします。
ここでは1974.1です。
次にM0-Mzを求めていきます。(Mzは各TIの測定値。ここでは補正値)
M0-Mzを計算して、表に記載していきます。
これで全TIのM0-Mzが求まりました。
次にグラフを作っていきます。
X軸をTI、Y軸をM0-Mzでグラフを作ります。
Y軸のみ対数表示です。
ここで本来であれば直線になるはずです。
上の測定グラフではまっすぐにはなっていませんね。
もし上記のように直線にならなかった場合、近似直線としてまっすぐに線を引き直しです。
これでグラフ作成終了です。
次はこれをもとにT1値を計算していきます。
計算
T1値の計算
グラフより計算を行っていきます。
まずグラフより、比較的線上にあると思われる点を2点、探します。
ここでは例としてTI100とTI600の2点を使用して計算していきます。
グラフよりTI100とTI600のM0-Mzの値を読み取ります。
これはプロット点の数値を読み取るのではなく、近似直線より読み取ります。
近似直線をせっかく描いたので、使います。
グラフよりTI100とTI600の数値を読み取ると、
TI100=3200
TI600=1070
T1値の計算式はこちらです。
測定した数値を代入していけばOKです。
この式に当てはめていきます。
まず計算式の左側部分、傾きを求めます。
計算式の右側部分に代入してT1値を計算していきます。
T1値結果
T1値=456.2ms
T2値の測定
手順
- TE値を変化させて連続撮像
- 信号強度測定
- グラフ作成
- 計算
TE値を変化させて連続撮像
参考条件
SE法/TR3000//Matrix128/NEX1/Slicethick5mm/FOV250/BW130Hz/pix/室温24度
T1値測定とは違いSE法で、以下の数値にTEを変化させ、撮影していきます。
全TE値での撮影が終わったら、信号強度を図ります。
SNR測定の時同様、ROIで平均信号値を読み取ります。
その作業を全TE分行い、表にまとめます。
信号強度測定
グラフ作成
次にグラフを作っていきます。
X軸をTE、Y軸を平均信号値(Save)でグラフを作ります。
Y軸のみ対数表示です。
ここで、本来であれば直線になると思います。
もしT1値測定のように直線にならなかった場合、近似直線としてまっすぐに線を引き直します。
今回は近似直線を引いても同様の直線となりました。
誤差なく測定ができました。
計算
グラフより計算を行っていきます。
比較的線上にあると思われる点を2点、探します。
ズレが大きい点ではないほうが良いと思います。
今回は例としてTEが20msecと180msecの信号強度を使用します。
グラフから読み取ると、
TE 20ms=1920
TE 180ms=1270
今回もT1値測定同様、プロット点の数値を読み取るのではなく、近似直線より読み取ります。
近似直線をせっかく描いたので、使いました。
計算してきます。
T2値の計算式です。
この式に当てはめていきます。
まず左側部分の傾きを求めます。
T2値結果
T2値=386.2ms
T2値がT1値よりも小さければOKです。
(超重要です!)
終了
わかりにくい部分もあると思いますが、一度やってみると意外とできてしまうはず。
溶液のファントムづくりが大変かもしれませんが、測定から計算は単純作業です。
時間はかかりますが、やっていることは大したことではありません。
レポートにまとめて提出の準備がちょっと面倒でしょうか。
レポートの書き方 | 磁気共鳴専門技術者認定試験にチャレンジ! (brightwalk.net)
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